大雨が各地に大きな爪痕を残しています。
毎年、訪れている熊野のキャンプ場も避難勧告が出て、
被害があったようす。

つむぎの森のお客様で、
熊野のシャーマンとひそかに呼んでいるRさんも
大雨で、ずっと停電が続いているそうです。
大きな被害がでないよう、
わたしたちは光を送り祈り続けることしかありません。

ちょうど、先日、なぜ世界が水で満たされたのか、
そんな創世神話でもあるワタリガラスの神話を
朗読と踊りで語り継ぐ、
アラスカのストーリーテラーのボブ・サムさんに
お会いすることができました。

星野道夫さんの愛読者、あるいは写真を愛する方なら
きっとご存じだと思います。


アラスカの自然を撮り続けた星野道夫さんの大切な友、
ボブ・サムさんは、大震災のあとも日本に訪れ、
祈りの旅を続けておられます。
ボブ・サムさんのワタリガラスの神話の語りと
奈良裕之さんの演奏、赤坂さんのアラスカの写真の
コラボレーションという、夢のようなイベントが
大阪福島で開催されたのです。

上の息子が生まれたころから、
星野道夫さんが大好きで、
写真集や本をいつも身近において、
何度も何度も読み返してきました。
展覧会には家族を連れて、やっぱり何度も何度も足を運びました。

中でも、『旅をする木』というエッセイ集がなによりも好きで、
たんたんとアラスカの自然を描写しているこの物語が
なぜこんなにも心を揺れ動かすのか、不思議に思うくらいです。

ボブさんは、アラスカが自らの文化や伝統に自信を無くし、
西洋社会に迎合し、開発が進んで掘り返され、
荒れ果てた祖先の墓地を目の当たりにしたことをきっかけに、
開発計画を中止させ、墓地の復興を一人で始めた方。

みんなに白い眼で見られながら、
たったひとりでこの作業を始めたのです。
彼が修復したお墓は、これまでに10万基以上、
再埋葬した遺体は500人以上になるといいます。

また長老たちから神話の語り手として選ばれ、
20年以上にわたり
世界各地でストーリーテリングを行っています。

演奏家の奈良裕之さんには
2006年の映画『ガイアシンフォニ−第6番』の「虚空の音」の章で
出会いました。
日本各地の聖地で、奉納演奏を行う彼の
即興演奏は、魂を震わせます。
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会場は、町屋を改造した居心地のよい空間。
キャンドルがともされ、ビャクダンのインセンスから静かに
煙と香りが立ち上る中、
演奏家の奈良さんが、
どこからともなく、風を集めた呼吸で
瞬時に会場をアラスカの大地に変えました。

おりんの深い深い音色。
弓というのは、本来このように使われていたのか、と
映画・地球交響曲を見たときにも驚きましたが、
目の前で、2本の弓をぐるぐると回し、
空気を共鳴させて複雑な音色を奏でるのを、目の当りにしました!

音は共鳴である。
すべてが共鳴し、空間にあらたな波を引き起こし、
時にはつんざき、溶け合うことなのですね。

そして風にのり、音楽とともに
アラスカの民族衣装で現れたボブさんは
おごそかに祈りはじめました。

ワタリガラスの神話。
なぜ貝殻の中には風が詰まっているのか。
ボブさんの絵本『かぜがおうちをみつけるまで』
(谷川俊太郎訳/スイッチ・パブリッシング刊)の
朗読とパフォーマンス。
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奇跡のような時間に立ち会っていることに
感動と感謝でいっぱいになりました。

大地と風と太陽と水、
そして、ひとがつながりあって生きていることへの気づき。
感謝。いとおしさ。
弱さを認める強さ。
出会いの奇跡。
地球の循環。

神話の世界は今、現在のわたしたちの未来へつながっています。
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