あの空の向こうに3の続きです。

Mさんの右足はトリートメントにつれて
とても暖かくきれいな色になってきました。
文字通り「血がかよいだした」かのように。


そして「ふー」と大きくため息をつき
「なんでこんなに空が青いんや」とつぶやきました。
え?と思ってベランダに面した大きな窓をみると
抜けるような青空が広がっています。
青い青い、深い海の底のように深みのある青。
青い空

「そうですね。青いですね。」とセラピストが
うなずくと、

「ここからは空しか見えん」吐き捨てるように
そう言って、涙をぽろぽろと流されたのです。

付き添いの方がおられるのか、どうかも分かりません。
荷物も少なく、がらーんとしている病室で、
ひとり告知を受け、心の苦しみと対極にあるかのような
あっけらかんと澄み切った青空を
何時間も眺めておられていたその気持ちを思うと、
一緒に涙が浮かんできました。

そこからは堰を切ったように、思いが流れ出しました。

今まで、一生懸命母親の介護をしてきたこと。
母一人子一人で、二人三脚でがんばってきたこと。
母を看取り、これからやっと自分の人生だと
思ったのもつかの間、体調不良で病院にくると
もう手遅れであったこと。
自分の今までの人生に悔いはないが、
これからの時間の短さを思うと
あまりに理不尽で、悲しく、どこに怒りをぶつけていいのか
分からないこと。

わたしはただ、ゆっくりと少しでも暖かさを伝えたくて、
さするように、なでるようにトリートメントを続けていました。

・・・スピリチュアルペイン・・・・

日本語に訳すのがとても難しいこの言葉を
あるホスピス医はこう表現しています。

『自分がいなくなる事と生きる意味の消失に伴う苦しみ』


死を目前にした人間のトータルペインという概念には、
4つのペイン(痛み)があります。
身体的な痛み、
精神的な痛み、
社会的な痛み、
そしてこのスピリチュアルペン。

最近では、この4つの痛みは並列的なものでなく、
比較的並列的な前の三者と比べて、
スピリチュアルペインはすべての苦しみを
インテグレート(統合)した概念と考えられつつあるようです。



もう少し続きます・・また次回に(*^_^*)








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